2025/10/09

オムロン サイニックエックス株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役社長:諏訪正樹、以下 OSX)は、「IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems(IROS 2026)」にて、5件の研究論文が採択されました。
「IROS」は「ICRA1)」とならび、ロボティクス領域において世界最大かつ最も影響力のあるトップカンファレンスの一つです。2026年は4,947件の投稿の中から、1,585件(約36%)の論文が採択され、9月27日から10月1日(現地時間)にかけてアメリカ ピッツバーグで開催されます。
1) IEEE International Conference on Robotics and Automation
IROS 2026での採択内容
■ Grounded Vision-Language Interpreter for Long-Horizon Bimanual Task and Motion Planning
(日本語訳:長期的な双腕ロボットの作業・動作計画のための視覚言語インタープリタ)
Jeremy Siburian (The University of Tokyo / OSX Intern), Keisuke Shirai (AIST2) / OSX Intern), Cristian Camilo Beltran-Hernandez (OSX), Masashi Hamaya (OSX), Michael Görner (Constructor University Bremen), Atsushi Hashimoto (OSX)
2) National Institute of Advanced Industrial Science and Technology
近年、視覚言語モデルの発展により、自然言語指示に基づくロボット計画は大きく進展しています。しかし、ブラックボックス性が高く、実環境で重要となる安全性の保証や解釈可能性に課題があります。一方、従来の記号的プランナーは安全性検証に優れるものの、専門家による複雑な設定が必要であり、特に双腕ロボットの複雑な作業への適用は十分に進んでいませんでした。
本研究では、視覚言語モデルと作業・動作計画を組み合わせたハイブリッド計画フレームワーク「ViLaIn-TAMP」を提案します。ViLaIn-TAMPは、マルチモーダル入力を構造化された計画仕様へ変換し、記号的・幾何学的制約に基づいて実行可能な軌道を生成するとともに、実行前にその実現可能性を検証します。さらに、動作失敗時のフィードバックを計画に反映する修正計画モジュールにより、仕様を改善します。
調理領域の双腕マニピュレーションタスクで評価した結果、ViLaIn-TAMPは、VLMを直接プランナーとして用いる手法と比較して平均成功率を18%向上させ、修正計画モジュールによりさらに32%の改善を達成。また、実機の双腕ロボットシステムでも有効性を確認しました。
【産業技術総合研究所からのお知らせ】
https://eart.airc.aist.go.jp/news/iros2026-presentations-ws/
■ PHASE: Compliance-Enabled Tactile Phase Retrieval for Few-Shot Insertion Learning
(日本語訳:PHASE: Few-Shot 挿入学習のための柔軟さと触覚を活用した段階的接触検索フレームワーク)
Jeremy Siburian (The University of Tokyo / OSX Intern), Cristian Camilo Beltran-Hernandez (OSX), Tatsuya Matsushima (The University of Tokyo), Yusuke Iwasawa (The University of Tokyo), Masashi Hamaya (OSX), Mai Nishimura (OSX)
ペグ挿入のように接触を伴う組立作業は、限られた実演データから学習することが難しい課題です。関連する過去データを活用して学習を補強する「検索拡張型模倣学習」は有望な手法ですが、接触を伴うマニピュレーションへの応用は十分に検討されていませんでした。特に、挿入作業は探索から挿入まで複数の段階で進むため、各段階に適した経験を過去データからどのように検索するかが課題となっていました。
本研究では、柔軟性を持つ手首機構により、ロボットが作業中に接触を維持できる点に着目しました。これにより得られる豊富な触覚・力覚信号は、挿入作業の段階構造を自然に示し、検索すべき経験の判断に役立ちます。この考えに基づき、接触段階を考慮した検索フレームワーク「PHASE(PHase-Aware Segmentation and REtrieval)」を提案します。PHASEは、接触を考慮したマルチモーダル表現学習、触覚信号に基づく可変長の段階分割、そして段階の整合性を保った検索を統合し、方策学習を支援します。
実世界のペグ挿入タスクにおいて、5種類のペグ形状を対象にPHASEを評価しました。その結果、PHASEは、段階構造を考慮しない既存の検索手法と比較して、既知・未知の形状で13%以上高い性能を示し、状態分布が変化する条件下では30%の改善を達成しました。これらの結果は、接触によって定義される作業段階に合わせて過去経験を検索することが、少数データによる挿入学習の頑健性向上に有効であることを示しています。
■ SHAFT: A Slack-Compensating, Helical-Buckling-Attenuating Flexible-Shaft Transmission for Lightweight Multi-DoF Manipulation
(日本語訳:SHAFT:軽量な多自由度物体操作のためのたるみ補償器と螺旋座屈抑制機構を有するフレキシブルシャフト伝達機構)
Tomoya Takahashi (OSX), Moses Gladson Selvamuthu (Yamagata University), Riichiro Tadakuma (Tohoku University), Kazutoshi Tanaka (OSX)
人間の生活空間で安全に働くロボットの実現にはアームの軽量化が有用であり、モーターを根本に配置する遠隔駆動方式が有効です。本研究では、軽量性と低摩擦を両立するフレキシブルシャフト伝達機構に着目しました。
この方式は関節の屈曲時にシャフトにたるみが生じ、負荷によって螺旋座屈というねじれ変形を起こすことで角度伝達誤差が悪化する課題がありました。そこで、アームの可動質量を増やさずにベース側から受動的に張力をかけ、たるみをリアルタイムに相殺する新機構「SHAFT」を提案しました。
実験では、4箇所の90度屈曲経路において伝達効率を約30%向上させ、伝達誤差を約65%低減しました。さらに、アーム重量わずか280gの6自由度マニピュレータを試作し、500gの可搬重量を運ぶ実用性を実証しました。
■ EgoReveal: Learning Active Vision and Object Manipulation under Partial Occlusions from Egocentric Demonstrations
(日本語訳:EgoReveal:一人称視点教示からの部分的遮蔽下における能動視覚と物体操作の同時学習)
Hiromu Kurihara (Keio University), Kazutoshi Tanaka (OSX), Masashi Hatano (Keio University), Tadashi Kozuno (OSX), Hideo Saito (Keio University), Mariko Isogawa (Keio University)
スマートグラス等を用いた一人称視点(エゴセントリック)デモンストレーションは、ロボットの物体操作模倣学習(LfD)において低コストかつ大規模なデータ収集を可能にします。しかし、日常環境では対象物体が他物体等により部分的に隠される遮蔽(オクルージョン)が頻発するにもかかわらず、従来の手法は推論時のカメラ視点が固定されているため、必要な視覚情報にアクセスできずタスクに失敗するという課題がありました。
そこで本研究では、遮蔽を能動的に回避して視認性を確保する視点移動と、その後の物体操作を同時に学習するフレームワーク「EgoReveal」を提案しました。本手法は、一人称動画から視点移動を予測する能動視覚方策ーと、移動後の視点から手先姿勢制御行動を出力する物体操作方策の2つを内包し、ターゲットの視認性評価に基づいてこれらを動的に切り替えます。
実験では、初期状態で物体が隠されている環境において、固定カメラのベースラインを上回るタスク成功率を達成し、訓練時に見られなかった未知の遮蔽物に対しても頑健に視点を回り込ませて操作を完了できる高い汎化性能を実証しました。
■ Symmetry-Breaking in Multi-Agent Navigation: Winding Number-Aware MPC with a Learned Topological Strategy
(日本語訳:回転数考慮MPCと位相的戦略の学習によるマルチエージェントナヴィゲーションにおける対称性破り)
Tomoki Nakao (Kyoto University), Kazumi Kasaura (OSX), Tadashi Kozuno (OSX)
明示的なコミュニケーションを行わない分散マルチエージェントナヴィゲーションにおいては、それぞれのエージェントが自律的にすれ違う方向を決めるため、エージェント同士の対称性によってデッドロックが引き起こされうる。この問題に対処するため、回転数という位相的普遍量を用いて協調的な対称性破り戦略を定量化し、強化学習によってそのような戦略を学習する、WNumMPCという階層的なナヴィゲーション手法を提案する。
この手法では密なエージェントの交差において、学習ベースのプランナーが符号付連続値の回転数と、クリティカルな相互作用を優先するための動的な重要度を出力する。そして、モデルベースのコントローラーがプランナーの出力した戦略に従って、衝突のない効率的な動作を生成する。
シミュレーションと実機実験において、WNumMPCは効率的にデッドロックや衝突を回避し、特に密で対称性の強い状況でベースライン手法を上回る性能を示した。また、これらの実験から、回転数を明示的に活用することでsim-to-realの性能低下が抑えられることが分かった。
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