ライフイベントを越えて成長した人財が、社会課題解決の萌芽を生む ~きれいごとではなく本音で語る 上司と部下の信頼関係がキャリア継続のカギ~

ヒューマンセンシングで新たなソリューションやサービスを提案する、新規事業がスタート

カメラ型の画像センサーで人の表情や性別、年齢、視線などを認識し、眠っている赤ちゃんの動きを検知して、泣き始める前に母親のスマートフォンに画像を送ったり、ペットや留守宅を見守る、ヒューマンビジョンコンポ『家族目線』。
オムロンがこれまで発売していないコンシューマーやサービスプロバイダーなどのユーザー向けに開発した商品群が、2015年9月に発売されました。

開発を手がけたのは、エレクトロニック&メカニカルコンポーネンツビジネスで、新規事業を担う部門として立ち上げられたアプリケーションオリエンティド事業部)。
事業企画部長の細川速美は、こう語ります。

「企業主導で、高性能な商品を作れば売れる、誰もが同じ『モノ』を求めた時代は終わりました。ユーザニーズは多極・多様化し、今求められているのは、一人一人に適し合わせてくれる機器や、ソリューション、サービスです。その実現の鍵となるのが、人のセンシングで、要となる技術は人理解画像センシングだと考えています。我々は、誰でも使い易い人理解画像センサーの提供と、ユーザや市場のアイデアを取り入れ実現方法も自然増殖させるオープンイノベーションの活用により、ユーザー・パートナーとWIN-WINのモデルを構築し、社会の多種多様なニーズに貢献できるという仮説の元、ユーザ向けの商品という形で『家族目線』のリリースを行いました」。 
それまでの企業向けに加え、ユーザに目を向けた事業の立ち上げるにあたっては、商品企画からビジネスモデルの構築、販売戦略の立案まであらゆることが初めての試み。
それを推進する企画課長に抜擢されたのが、寺川裕佳里でした。

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アプリケーションオリエンティド事業部 事業企画部 企画課長 寺川裕佳里




技術開発で培った視点が
新規事業の推進に生きている

もともとは、オムロングループの技術の要となる、技術本部で光デバイスの開発などに従事してきたエンジニアの寺川。
2008年にこの新規事業部に配属された後、結婚、出産を経験。企画課長として新事業に挑戦することになったのは、育児休暇を経て復帰して間もなくのことでした。

「ユーザ向け商品の開発を通じて目指したのは、オムロンが世界にリードして開発してきた技術の一つ、人理解画像センシング技術をベースに、これまでにない新しい価値を提供するソリューションを開発すること。
そのためにベンチャー企業などの社外パートナーにオムロンの技術を供与し、『オープンイノベーション』で新しいアプリやソリューションの開発を進めることに挑戦しました」と寺川。

寺川がリーダーとなって、「オープンイノベーション」の社内の仕組みを構築。
ハッカソンという社外のオープンな場に、初めて自社の重要な技術を提供する体制を構築したり、オムロンの開発者と意見交換できる機能を持った専用のWEBサイトの立ち上げ、SNSで情報を発信するなど、社外のパートナーを掘り起こすさまざまな仕組みを作り上げました。

「どんなことに取り組むのかをゼロから考え、新しい事業を軌道に乗せなければならない難しい仕事ですが、寺川さんは、どのように取り組めば目標を達成できるか、経営的な視点で考え、事業運営に落とし込んで提案できる。企画課長として期待した役割をしっかり果たしています」と、細川は評価します。

事業全体を俯瞰から見つめて戦略を立てようとする視点は、技術本部で培われたものだと振り返った寺川。
「自分の開発する技術がどのように事業になり、社会に貢献するか。常に考え続けてきた結果が、現在の仕事にも生きています」と語ります。
「企画課長になって、自分で判断しなければならないことが一気に増えました。自分の下した判断が正しいか否かは結果を待たなければわかりません。常に決断をする怖さはあるけれど、そうしたプレッシャーも含めて楽しんでいます」。




社員の意欲と能力を大切にする
上司のブレない姿勢が支えに

とはいえ幼い子どもを抱えながら重責を担うのは簡単ではありません。
企画課長に任命するにあたって、上司である細川に心配やためらいはなかったのでしょうか。

「育児休暇などで第一線を離れられることは、もちろん事業部としては痛手です。新しい事業に取り組もうとしている時なら、なおさらです。しかし業務の中で誰が何をするにしても失敗したりつまずいたり、立ち止まって考えてみるといったことはよくあります。それよりも、『やりたい』という高い意欲と『やれる』能力を存分に発揮してもらうことの方が大切だと考えています」と細川は言います。

もちろん、与えられた責任を全うすることに対して甘えは許されません。
業務に打ち込める物理的な時間が短くなった中で、「要求されるレベルは非常に高い」とその厳しさを実感しながらも、寺川の表情は明るく、笑顔が絶えません。

その理由を寺川は「上司である細川さんはタテマエや『きれいごと』ではなく、現実に即して厳しい意見もはっきり言ってくれる。だから私も、遠慮せずに本音を言える」と語ります。

会社の支援制度が整っていても、短期間に答えを求められる時もあり、仕事では自分で業務やタイミングを調整し、バランスを取らなければならないことがたくさんあります。
そんな時、上司だけでなく周囲と不安や不満も含めて率直に話し合える信頼関係を築いていることが、大きなサポートになると寺川は感じています。

出産や育児だけでなく、社員それぞれが抱える事情はさまざまです。
各社員のメリット・デメリットを受け止め、その中で各々が存分に力を発揮するにはどう支えるべきかを考える。
細川のそうした一貫した姿勢が、寺川のみならず、みなが伸び伸びと働ける環境をつくっています。

126-002.jpgアプリケーションオリエンティド事業部 事業企画部長 細川速美




二人目の出産・育児をしながら
キャリアを重ね、社会に貢献する

現在寺川の部門では、「オープンイノベーション」によって複数の企業と連携し、新たなアプリケーションの開発が進んでいます。
「社外のベンチャー企業などと連携したり、また商品を通じてコンシューマーにより近いところでニーズを吸い上げる中で、介護の分野での高齢者の見守りなど、新たな社会的課題が見えてきました」と寺川。

「ヒューマンセンシングを生かしてこれまでのオムロンが着手していなかった新たな社会的課題を解決し、安全・安心な社会の構築に貢献したい」と、技術を強みにもつ夢は広がります。

2016年10月に2人目の出産と育児休暇を控える寺川。
「復帰したら、また新事業で今以上に社会に価値ある仕事に力を尽くし、事業を大きく成長させたい」と早くも先を見すえています。

細川は、「寺川さんはキャリアを積んでこれからもっと事業や組織に貢献してくれる人材。途中であきらめるようなことがあっては、会社にとっても損失です。とはいえ誰もがいつも強い気持ちでがんばれるわけではありません。ライフイベントによっては、気持ちがくじけそうになる時があるかもしれない。その時にあきらめてしまわないよう支えられる存在でありたい」と言います。



ライフイベントは今や家庭の女性だけの問題ではありません。
企業、社会がどう乗り越え、能力ある人財とともに社会をよりよくしていくのか。

オムロンは制度面の充実だけではなく、働き方の改革を全社で推進し、社員一人ひとりがイキイキと働くことで多様性の中からうまれる新たな価値を社会に創出していきます。

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